2015年8月28日金曜日

平成二十七年夏興帖 第七 (羽村 美和子・関悦史・瀬越悠矢・前北かおる・小沢麻結・仲田陽子・月野ぽぽな・近恵)



羽村 美和子 (「豈」「WA」「連衆」)
古代蓮十四五本は深眠り
化粧パックに隈取りの柄仏法僧
夕暮れの四隅あいまい青蜥蜴



関悦史
飛ぶカナブン追ひゆく食欲の雀
閉ぢられて超自我となる扇かな
イスカンダルの海を思へば涼しからん



瀬越悠矢
号令に級長の癖さるすべり
前衛に定めありなむ浮いてこい
夏旺んなり革命に詩のあれば



前北かおる(「夏潮」)
雲の影取り払はれて夏野かな
日おもてを歩む鴉や夏野原
火の粉振り撒きて子の泣く夏野かな




小沢麻結
栗の花散らばつてゐる夜明かな
夕立やざくざく駆くるスニーカー
はたた神甲斐の旅客を睥睨す



仲田陽子
ステンドグラス越しの福音蝉時雨
空蝉を集めるごとき安息日
涼しさや切り落とされしパンの耳
ピクルスの種を抜かれし穴に夏
百日紅眠りたりない日曜日




月野ぽぽな(「海程」同人)
炎天の重心ずれる旅鞄
近道は細道ゆうやけの匂い
ひとしずくまたひとしずく蛍の火



近恵(こんけい「炎環」「豆の木」)
何度でも手花火戦後民主主義
蝉の翅伸び夢見るという病
夕焼けの始まりは水の音して