2017年2月24日金曜日

平成二十九年 歳旦帖 第二 (仙田洋子・ふけとしこ・五島高資・堀本吟・渕上信子)



仙田洋子
初晴や引つかき傷のやうに鳥
なつかしき人と分け合ふごまめかな
戒名はいらぬと父の初日記
獅子舞の恥ぢらふやうに退りけり
押し合ふもこの世のならひ初戎
鏡割星の生まるる方を向き
餅花の匂ふがごとく揺れにけり



ふけとしこ
七日粥献血年齢すでに過ぎ
雪折れの枝よづきづき痛むだらう
梟が面付け替へてゐるところ



五島高資
日を入れる船溜りかな初昔
淑気満つ宇津保舟なる月の影
金星へ抜ける道あり鬼火焚



堀本 吟
歳旦三物 
歳旦の大河こよなき景色かな
 愛(めぐ)しき春着橋の殷賑   
夢に遭ふ蝶をわが身と呼ばすらん 

 
渕上信子
短句(有季定形)
万年床にひとり鶏旦
二日隣家の犬に挨拶
三日の船に男逞し
「春駒」は書初をはみ出し
五日はや普通の顔ばかり