2017年3月10日金曜日

平成二十九年 歳旦帖 第四 (仲寒蟬・曾根 毅・松下カロ・椿屋実梛・前北かおる)



仲寒蟬
初夢の中で仕事をしてゐたり
地震ではなく初湯の揺れてをるがよし
獅子舞にヒップホップの癖すこし
初夢のかならず最後には走る
初鴉神武を知つてゐる面持ち


曾根 毅
孤独死のあちらこちらにしずり雪
冬瀧や巌を畏れて引き返し
雪囲い皆一様に衰えて


松下カロ
いちまいのたましひ狂ふいかのぼり
白魚が喉を越えゆく山河かな
沈黙は吹雪に似たるチェロソナタ


椿屋実梛
四日はやバーカウンターに沈思して
梅が香にむれつつさらに奥へゆく
初霞あれは恋だつたに違いない


前北かおる(夏潮)
校倉に飾り錠前竜の玉
差し入るる指の先に竜の玉
竜の玉三日月形の傷もちて