2017年11月3日金曜日

平成二十九年 秋興帖 第二(岸本尚毅・辻村麻乃・夏木久)



岸本尚毅
秋淋し石の蛙とゴムの蛇
歪めたる顔のやうなる茸かな
草の葉を押し上げてゐる茸かな
脚をもて首掻く鶴や草紅葉
くちばしに蜂をとらへぬ鶴の秋
木の実降り写真古びぬ写真館
鼻唄の女秋風に一寸変


辻村麻乃
重たげに動く秒針小鳥来る
縁石の赤きパンプス月の客
台風の目の駅舎へと駆け込みぬ
霧深き山に吸はれてあずさ号
うろこ雲亀のゆるりと漂泊す
眠つたり交つたりして秋の蝶
店裏のお化け南瓜の口真つ赤


夏木久
心室を叩き秋思を誘ふ夜
秋口や白朝顔のひとつ咲き
黄落やビートルズなど耳障り
ロボットを志すとふ案山子かな
花束はガードレールを蟲時雨
地下室を開けて新月開放す
為体な風に端唄を野紺菊