2018年3月2日金曜日

【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善(辻村麻乃・曾根毅・月野ぽぽな・五島高資・北川美美・島田牙城・豊里友行・加藤知子・仲寒蟬・神山姫余・佐藤りえ・高山れおな・筑紫磐井)



辻村麻乃
 斑雪山
斑雪まだ聞き足らぬ秩父の子
困民党残せし痕や春社
狼の天を見つめる眼に涙
兜太いま春の武甲に木霊して
斑雪山あれは兜太だつたかもしれぬ


曾根毅
狼の冷たくなりし黒眼鏡
腹出して寝る人間【じんかん】の零余子飯


月野ぽぽな(海程)
天に星地に梅ともし兜太逝く


五島高資
片目にて笑む師のなみだ風光る
永日や手のひらに手のひらを置く
冴え返る利根の流れや巨星墜つ
利根川や冬三日月の残りたる
福島の残雪ゆがむ泪かな


北川美美
海程秩父道場にて兜太氏は旅館側で用意した二つに裁断されたバナナを片手摑みに登場。2015年の春だった。
マラソンや手渡すバナナ半裁に


島田牙城
金子兜太逝くや春星ふくらませ
なほ停まらざるや兜太の三輪車
星の中の星の地球ぞ兜太逝く
兜太の狼敏雄の狼を追へり
然らばとて然らばと言へり兜太逝く


豊里友行
海ほど脈打つ兜太のほうれん草
海ほどの金子兜太の夢野かな


加藤知子
春落暉大先生の掌ありしが
花盛りを待たず人体の別れかな
梅が香やへうと自在のかなたへと


仲寒蟬
どこまでも狼を追ひつづくべし
臍出して立小便を春空から


神山姫余
春一番兜太が鮫に乗ってゆく
天翔る陸の鯨や兜太逝く


佐藤りえ
草の舟乗らうかさうか手を貸さう


高山れおな
さほひめ と つれだつ まかみ ふりむかず


筑紫磐井
北天に架かるあれが
かくも静かに二月の記憶 兜太星



第83回海程秩父俳句道場(2015年4月5日(日)) 写真:北川美美
左より金子兜太・関悦史・筑紫磐井

左より、安西篤・筑紫磐井・金子兜太・関悦史
背後ホワイトボードの句(金子兜太:老人は青年の敵 強き敵 (筑紫磐井))