2018年3月9日金曜日

平成三十年 歳旦帖 第一(網野月を・堀本吟・仲寒蟬・坂間恒子・小野裕三・神谷 波・杉山久子)



網野月を
初明り見慣れし山山の匂い
初日の出自ずと体を正対す
白銀の雪白銀の淑気満つ
大病治し淑気満つ古女房
俎板の初めは菜切の軽さ
稚児鱈や休めて四五回研ぐ庖丁
息掛けて相合傘の書始め


堀本吟
年明ける
 平成三十年元日夕べ月の出満月前夜
あらたまのスーパームーンおおきいな
マイホーム遁げ黄道を行くチワワ
粥占にぐじゃぐじゃとこの起居なり
火の鳥はでてこなかったとんど焼き
 一月三十一日・満月・皆既月食
スーパー・ブルー・ブラッドムーン一月尽


仲寒蟬
裏山へつづく足跡去年今年
音鳴らぬラヂオの上の淑気かな
鳶一羽容れあり余る初御空
雑煮餅伸ばせば湯気も伸びにけり
これたしか木曽の土産の雑煮椀
具の奥に朱のあらはるる雑煮椀
アマゾンで来る初夢の宇宙船


坂間恒子
初鶯支援学校門ひらく
元旦や感情の鏡ピアニッシモ
修道女(シスター)と連れ立ちゆきぬ弥撒始め


小野裕三
ほぼ空の大きさである初詣
書初めの二番目の文字もう斜め
七草粥宇宙の果てのごとくあり


神谷 波
気力使ひはたして除夜の抱き枕
去年今年鏡の中を覗きこむ
元日のキッチンなにやらよそよそし
片田舎のスーパームーン注連飾


杉山久子
雨のことすこし記して初日記
羊日の読み取り難きバーコード
CMがうたふ新春墓石フェア