2017年5月5日金曜日

平成二十九年 春興帖 第三 (夏木久・網野月を・林雅樹)




夏木久
0時0分北緯35度の白魚           
澱に落つ私の今が畢るとき
硝子器の国家の烏木の故郷
寿司醤油蓋に溶きをり花吹雪
春月の笑ひの残るバスストップ
地下室の奇跡見せたくガーベラ蒔く
菠薐草呑み込んでいいと誰が言つた



網野月を
何処からかセメダイン臭花曇
桜散るまでの日雇い塾講師
桜咲く判官塚に天気雨
花冷や堂脇に犬猫供養塔
掛け紐のシウマイ弁当花の雨
「ヴァンゼー連詩」散る花びらを栞けり
綻びる水の流れや花筏



林雅樹(澤)
俳人の杉田久女さん体の一部が干潟で発見
砂浜の細りて長し春の暮
ぶらんこに腰掛け虚子や死んでをり
鳴る前に光る電話や冴え返る
俳句部男子女生徒を刺す日永かな
意識高い系ネット俳人自殺落第を苦にして
春灯に動くや亀と人間と