2017年8月11日金曜日

平成二十九年 花鳥篇 第七(中村猛虎・真矢ひろみ・水岩 瞳・青木百舌鳥)



中村猛虎
アリバイは春の朧に濡れている
テトラポットの底に溜まっている春眠
蒲公英の絮役職定年の日
蛍狩無量大数の彼方へ
蝸牛シーソー這えば戦争始まる
海亀の泣きて人間廃業す
淋しさと気楽の隙間海月浮く

【紹介文・近況】
1961年生まれ。20代後半、会社の同僚であった林誠司氏(現 月間俳句界編集長)の誘いで「河」増成栗人先生の指導を受け、俳句を始める。2005年、故郷兵庫県姫路市で、商工会議所若手経営者をメンバーとし、俳句勉強会 句会亜流里(あるさと)立ち上げ。姫路市内には、芭蕉の遺品の蓑笠が遺っており、これらが収められていた、今は無き増位山随願寺風羅堂を再建するための播磨芭蕉忌フェスティバル(本年11回目)の開催、小中学校への出前俳句講座、など活動中。2010年、風羅堂焼失後、69年間空席であった、芭蕉翁を第1世とする風羅第12世を継ぐ。昨年、一昨年と2年連続で、NHKeテレの「俳句王国がゆく」に出演、夏井いつき氏の毒舌と絡み、俳句よりしゃべくりで会場を沸かせた。ロマネコンテ所属・現代俳句協会会員


真矢ひろみ
県道にミミズのたうつ電波の日
一魂を結ぶ海市を非在とす
業なるべし紫陽花を秋色にして
緑陰を出で逆夢に折り返す
文学は下駄履かぬもの重信忌

【紹介文・近況】
地方(愛媛)在住 男性。まず英語HAIKUに携わり、その後、俳句と関わる。以来30年弱。性、至極怠惰にして、狷介固陋なる俳句環境に遊びかつ自閉するきらいあり。楽しいものの意義無いものと自省。


水岩 瞳
散る桜ほんね言はぬも愛のうち
こどもの頃を思ひ出す日やこどもの日
その手順こそが共謀夏の闇


青木百舌鳥(夏潮)
斑雪嶺を打つ日も消えて本降りに
村上や松の咲きたる吊し鮭
左肘張つて田植機発進す
田植機の赤そのほかも懐古的
急峻にして筍の乱杭に